東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)98号 判決
一 請求原因一及び二の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。
二 原告は、本願商標の冒頭部分は、図形であつて、文字ではないと主張する。しかし、右冒頭部分は、他の文字部分「rome」の直前に位置し、欧文字の大文字が全文字中に占めるに相応しい位置にあること、右冒頭部分の大きさも、これが大文字を表わすとすれば不釣合いではないこと、したがつて、右冒頭部分がその形状からみて欧文字「A」を図案化したものであることは、通常の取引者需要者に容易に理解されること、成立に争いのない乙第一号証ないし第三号証によれば、文字商標である「Alitalia」、「CROWN」、「TOPSKY」の例においても、それぞれ構成文字中の「A」、「W」、「O」の文字部分に図案化した文字が使用されていることが認められること、以上を総合すれば、本願商標の冒頭部分は、欧文字「A」を図案化したものとして、全体は「Aroma」の文字を表わしたものと一般に認識されうるものというべきである。
成立に争いのない甲第九号証も、本願商標の冒頭部分が文字としては読めないという資料とはならず、成立に争いのない甲第一〇号証ないし第一三号証も、前記認定を左右するに足りるものではない。そして、審決も、以上の説示も、本願商標の冒頭部分が欧文字「A」を図案化したものと認識されるとするものであつて、図形と文字との結合による商標を否定するものではないから、原告主張のように、商標法第二条の規定違背を問う余地のないことは、いうまでもない。
原告は、仮に右冒頭部分を文字「A」と解しても、本願商標は、「A」「rome」の二語であると主張する。しかし、前認定のとおり「A」と「rome」の間には間隔はなく、「アローム」と無理なく一連に称呼できるので、本願商標は、「Arome」の一語とみるのがむしろ自然というべきである。原告の右主張は採用できない。
次に、本願商標から生ずる「アローム」と引用例から生ずる「アローマ」の各称呼の類否について検討するに、両者は、同数の音から成り、末尾以外の音を同じくし、各末尾音の「ム」も「マ」も共にマ行に属し、両唇を閉じて発音する鼻音〔m〕で始まることで共通していて、発音上近接する音であり、「アローム」も「アローマ」も一連に称呼するときは、末尾音以外がいずれも長音を伴う共通音であつて、両者は全体の語韻、語調が近似しているから、簡易迅速を旨とする取引の実情のもとにおいては、「アローム」と「アローマ」の各称呼は類似するというべきものである。これと同趣旨の審決に誤りはない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
第一
<省略>
第二
<省略>